……白。

それは、まるで……雪みたいで。
永遠の色に、街を、時を、染め上げる……雪のようで。


やりなおしたい、そんな……思い出。
……たとえ……あに、が……



あにが、みんな……つつみこんでくれても。



……ひなまつり。
その日……空から、しずかに……
雪が、降ったの。


……おぼえてるかな?
折り紙の、おひなさま。



わけあって、あたしは……おひなさまを、人の家でしか……見たことがない。
不思議なもので、ね……うふふ、ない、って分かってると……ないなりに、さびしいとか……思わなかったんだよね。
それでも……ふと、小さな千代紙を見つけて。

クリスマスの、ポインセチアのお飾りに使った、赤い千代紙。
うふふ、柄は格子柄なのに……なぜか、それが……気になったんだよね。

気がつけば……お内裏様と、お雛様……
色違いの紙で、折って……

それを、……えへへ、あには、勘違いしたのかな?
……ボール紙で、お雛壇……作ってくれたの。

……えへへ……「さみしいんじゃないんだよ」って、言えば……ほんとの気持ちは、伝えられたけど。
……あたしは、ないしょのまま……
あにが作ってくれた、段々に……小さな千代紙で模様をつけて。



心が、そのまま伝わらない事も……きっと、いっぱいある。

でも、それだってあったかい事を……ほんとは、分かってるの。




何年前のお話かも、忘れちゃうほどの思い出……

今年もまた、この日が来るの。
…………女の子の、おいわい。


白い面を、谷折りにすると……純白の、かさねの……完成。

……白無垢、って……いうんだよね。



女の子の心は、砂糖とマシュマロでできてる。

……うふふ、なんのフレーズだったかな……


ねえ。
空から、降る雪は……どこか、マシュマロに……似てない?

窓の外。
しんしんと、雪は降り積もって。
絶え絶えかかる、雪の玉水……

そして、街の明かりが消えて。
外は、真っ暗の……はずなのに。

……この時間……
月を受け止めて、雪が……とっても、明るく……光るの。


……そう。
雪は、誰にも染められない……光の色で、降りてくるの。


ウエディングドレスも、白無垢も……
本当は、雪と同じ……光の色をしているのかも、しれないね。


忘れたいこと、いっぱい……あるよ。
それは、さみしいことじゃなくて、つらい事でもなくて。

……なんにも、感じないこと。

なにかに……麻痺してしまったかのように、なにも……かんじないこと。


だから。


その理由になっても、ならなくてもいいから……
あたしは、お雛様を……作るの。



しあわせなひとも。
さみしいひとも。
だれかのそばにいるひとも。
となりに、しずけさしかいないひとも。


心のお洋服は……きっと、光の色をしているから。



綿雪が、道を少しずつ、白く染めています。
ゆっくりと、おだやかに。






思い出と似た形の……でも、どこかちがう、折り紙のおひなさま。

あれから、あたしは……すっかり、大きくなって。
ひとりでも、何とか……やっていけるようになって。

……そして、恋や、愛情や……
……それらとは違う、何かを知って。





もう、きっとあたしは……白無垢は、着られないから。


たとえ、あにが……みんな、つつみこんでくれても。
……きっと、あたしが……何とかしなきゃいけない、大切なこと。



豪華なおひなさまは、あたしにはない。
あるのは、こうして……手で折って作る、折り紙くらい。


でも……今は、それでいいの。

……だって。えへへ、今日だけは……
女の子の、お祝いの日なんだから……
理由とか、現実とか……そんなのどうでもいいから。



………………がんばれ、あたし。



夜明けとは違う、雪明りに照らされながら。

空からのおくりものを……手のひらにのせながら。

もう、少しだけ。



………………あにの手のひらで、とけていければ……ね。

            【ひとひらの、ゆき】完


人に言えないこと。
明かしたくないこと……って、知りたくなってしまうもの。
「分からないところがあるから好きなんだ」なんて、言っても。
それを知る過程と、知った後のいとおしさがあればこそ。

逢にも、そんな何かはあるんです。

それが何か、って?
さあ、俺は知りません、一応w

俺はあくまで、逢の言葉を書き表してるだけですから。

…………わかってても、俺、そういう「卑怯」が好きなんです。
戻ります……☆