ひらめくゆめに ……あ。

とっさに、それが……夢だって、わかったんです。

見たこともない、服……
……うふふ、かわいい、傘……
歩いてる感覚がないのに、世界が後ろに歩いてくの。
……ああ、じゃあ、夢だね……

夢は……あのね、嫌いだけど……でも、好き。

だって、夢の中では、ちょっと……ううん、ずぅっと、勇気がもてるの。
いつもなら……できない事だって、いっぱい……

かくしていることも、みんな、さらけ出せる……

ひとつだけ、嫌いな理由もあるけど……



きっとこのまま、この道を歩けば……
……うーん、歩く、なんていわずに……えーい。

……えへへ、やっぱりだぁ。

ふわふわ、まるで風船みたいに、うきうきと、跳ねて。
そうだ、できるだけ遠くから、ふわっ……て。
……あにのところに、飛び込んじゃおう……
うふふ、ここでは、どんなことしても……平気だから。
……いた!駅の前、改札を出てすぐのところ。
……まだ、すごい離れてるから、ぜんぜん……


……気づいて、ない……



…………えーい!



どしっ!
……えへへ、あにに……飛びついちゃった……
目の前の、あにの、びっくりした顔……
う…………ぐぅ……や、やっぱり…………一番……かっこいいよぉ……

……で、でもでも、今は、これは夢なんだから!
首のところに手を回して、ぎゅっ……って。

……うわぁ……
えへへ……あにに、抱きついちゃった……
……まだ、びっくりした顔の、あに。
うふふ、普段なら、絶対こんなこと……しないもんね。
でも、夢なんだもん。夢なら、あにの……あにの、いちばんにだって……




…………夢、なら……

夢……なんだ……

夢を、ただひとつ、嫌いなところ……

そのとたん。
あたしが、ゆめ、って、つぶやいたとたん。
……にぎやかな駅前も、抱きついたはずの……あにも、消える。

やだよ……

思い出したくなんてない。
目が覚めれば、また、何もかわらない……ただの、あたし。
……あにに、とびついて……ぎゅっ、って出来る勇気もない。
風船みたいに、ふわふわうきうき町も歩けない……
……うそっこじゃないと……

……あたしなんて、何もできないんだ……


……いや!
今までのあたしなら、きっと……
でも。夢でもなんでも、今日だけは違うもん!

あたしのまわりで、静かに、えいえんみたいに続く、暗闇。
でも、あたしは……がむしゃらに前に走ってた。


勇気もない。かわいくもない。
……まだ、あにの「いちばん」には、とてもなれないかもしれない。
負けちゃうかもしれない。

でも。
たとえ、あたしがそんな……かわいくない子でも。
あたしが、何の力もない……駄目な子でも。


あたしの、あには……あたしの、希望なんだから。


あには、いつもあたしのちょっと前で、あたしに手を差し出してくれる。
きっと、行こうと思えばどんどん先に行けちゃうのに。
でも、あたしに合わせてくれている。

……あたし、かわいくなれるんなら……
そう……あにのための、お姫様になれるなら……

ううん、なれるくらい、がんばらなくちゃ、駄目……
あにが待っていてくれる……そのお姫様が、たとえあたしじゃなくても。
もしかしたら、別にあにが誰かを必要としてなくても。

……あたしにとって、「いちばんかわいく」なるのが、……
……ほんとうの、「ゆめ」。
そう、あににとって。……たったひとりの……あにに、とっての。


かきわけ続けた闇が、やがて、晴れてきた。
……すごい、まぶしい光……

たまらず、あたしは手で目を覆ったの。


……その、むこうに、……誰かがいたの。
……なぜか、それが……あにだと、直感で分かった。
どうせ夢……うん、こんな時にこそ、そう思わなきゃ!
「……あに!」
あたし、あにのいちばんの……おひめさまに…………



…………………………

…………はふ?



あれぇ……

薄暗い、部屋。窓から、光が差し込んでくる。
……それにしては、ずいぶん、まぶしいね……

ん……まぶしい……

……!じ、時間!

……でも、慌てたわりには、十分早起きで……
よかったぁ……そっと、窓を開けました。
さわやかな風が、入り込んできます。
……うふふ、おでかけも……いっそう、楽しくなるね。

……あれぇ……
そこで、気がついたんです。
なんで……あたし、泣いてるんだろう?

怖い夢でも、見たっけなぁ……
……でも、そんな記憶は、ぜんぜんなくて……
何か、長い夢を……見たような気が、するんだけど。

……でも、もう……思い出せませんでした。

……いいか。そのうち、思い出せるかも……しれないし。

涙をぬぐいながら、用意してたお洋服をハンガーからはずして。
……うふふ、今日は、大切な日だもんね……
悪い夢なんて、見てるはず……ないよね?

鏡を見ながら、ふと、思いました。

今日は、これから……どんな一日になるのかな、って。



うふふ、おはよう、あに。
なんとなく、そうつぶやいて。

もうすぐ会える……そのとき、また言うけどね……えへへ……




はい、第二段ですね。
昨日の「夜」、日記の書き疲れであっという間に寝ちゃった逢。
疲れてるときって、変な夢、よく見ませんか?
ゆきは底抜けに楽しい夢か、逆に悲しい夢を見ます。
しかも割りと忘れられず、鮮明に覚えてるんですよね(泣)
あがー。みなさん、いい夢見てますかぁ?(笑)

夜編【おもい、まどろみ】はこちら……

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