時間の早さに追いつくために。
……みんな、急いでる。


開いたドアから……われ先に……人波が降りてく。

………………あ。





ぐ、ぐぅ。
今の駅、あたし……降りようと……してたんだった……





…………そのときの、気分を……
あたしには、きっと……どれだけ考えても、説明できないかも……


反対車線に乗ることも。
次の駅で降りようとも、しないで。



……終点まで、行ってみよう。

そう、思った。





どうして、って聞かれたら、もう……納得なんて、させられません。
だって……理由なんて、これぽっちも……なかったの。


……駅を降りれば。
並ぶショーケースの中には、新作のコートが並び。
トルソが、……完全無欠のスタイルで、ずぅっと……
きれいに着こなしながら、街を流れる人達を見つめてる。


…………ぐぅ……
やさしく揺られるうちに、……ねむく、なって……きちゃった。


終点までは……ずぅっと……先。
………………




…………かぜの、におい。
このはが、こすれあう…………ちいさなメロディ…………








…………あれ…………


ここ…………??



……窓のむこう、……みたこともない、風景……

うふふ、はじめて……あにが、連れていってくれた時……
あの、思い出の……街に、手を引っ張って。
……まだ小さかったあたしを、連れて行ってくれたとき……


見知らぬ町並みを見ると。
あの日を、思い出します。



何もかもが、新しくて。
……こわくて、それと同じだけ、わくわく……した。
ひとりでいるよりも、……あに、と……ふたりになりたい、って。
そう思ったときに、恐さは……期待へと変わった。



うふふ、だから、さっき……降りる気がしなかったのかな?



長い長い、終点までの……ちいさな、旅。
切符を出して、空を見上げたら、こころもち行き先の方に……。
お日様が、目印になってるような気が……しました。




静かな昼下がり。
河を越えて、自転車とすれちがいながら。
……とおくに見える信号まで、歩いて。
また、そこまで着いたら、もうひとつ、とおくの信号……



うふふ。
……なんで、こんなに楽しいんだろ。

あにとの時間は、あたしにとって……楽しいのとは、ちょっと、違う。
笑顔で話しながら、コーヒーのおかわりをしたり。
季節のデザートを話の種にして、次はどこに行こうか、なんて……考えて。




……それでも、心は、どきどきして……
サーカスのピエロみたいに、止められなくなる。
……



ふたりでいられる時間が、いとしく、なる。



…………いとしいことを「楽しい」とは言わないなら。
……あに、と、いる時間は……楽しいだけじゃ……ないの。








……あれ?


考え事をしながら、歩いてたから……

どれだけ、駅から離れたんだろう。
あたしの目の前に……大きな、アミューズメントパークがあった。


……ぐ、ぐぅ、か、帰れるかな……


不安な心を抑えながら、その入り口に近づくと……


あ…………
いつも行く、コーヒーショップの…………系列店だぁ……

うふふ、こんなとこにも……あるんだね。

自然と、あたしの足は……店内へと向かってた。

列に並びながら、コーヒーを選ぶうちに……
……足が、がくがく……えへへ、けっこう……疲れてたんだね。
ちょっと甘いのを飲みたくて……
ひさしぶりの、キャラメルマキアートにした。
えへへ、あにと最初に、ここと同じ会社のお店に入ったとき……
あたし、「マキアート」って、なんだかわからなくて……
あにが飲んでるのを……ちょっとだけ、飲ませてもらったんだよね……

……あ、めずらしい……チョコのスコーン、ちょうど焼き上がり……

普段、焼き上がりにはめったに……おめに、かかれない。
でも、偶然そのチャンスをものに出来た時……
……うふふ、すごく……幸せなくらい、おいしかったの……



キャラメルのと、チョコのスコーン。
えへへ……



マキアート、って、本当は……

なんて、思い出しながら……トレイを手に………………






『!ひゃあぁっ!』




……!!!!!

おどろいたまま、言葉は出なくって。
……ただ。

トレイを落としながら、しゃがみこんでる女の子と……
からん、からん……って、床で弾むお皿を見ていた。


『あたー……!!ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?!』
……視線が、こちらを見てて……あ、あたしに……言ってるんだね……
うふふ、大丈夫ですよ……

なんて答えながら、……自分の持つトレイに……
ある、変化が……あったの。

偶然にも、その子は飲み物を持ってなくて。
だから、それが……あたしにかかることもなく。
…………ぐぅ、コーヒーのしみは、大変だからね……

……だから。
目の前の子が、きょろきょろと……あたりを見回してるのを見て。

……うふふ、スコーンなら、ここですよ。



あたしの持つトレイ、お皿の上に……
ふたつに増えたスコーンが、なぜかきれいに並んでた。
あたしの分と……飛ばしそうになった、その子の分と。






『ほんとーにごめんね。しかも、スコーンも助けてもらっちゃって。』
そう言いながら、その子は……
うふふ、あたしと同じテーブルに座ってたの。

……どうしてなんだろう、この子は……こわく、ない。
あたしのお皿にちょうど乗ったスコーン。
せっかくだから、一緒に食べませんか?
……不思議なんだけど、そうお誘いをかけたのは……あたし、だった。
『え?あ、実はあたし、他の人と一緒で……でもまあ、いいかな。』
そう言いながら、すぐそばのテーブルに着くその子。
自然と、あたしも向かいの席に座った。
……誰かと、一緒なの?……うふふ、彼氏さん、とか?
『え、え!そ、そんな、違うよ、……あー、違わないような、違うような……と、とにかくちょっと違うよ。』
苦笑いしながら、でも……その顔は、ほんのりピンク色……
うふふ、あたしが思ってるよりも、なんか……かわいい子。
カジュアルっぽい服だけど……
……どこか、……なんだろう、ただのカジュアルとは違う……
緑と、赤の使い方が、さりげなく生きてる……そんな着こなし。
あたしとは違うけど……でも、……いい意味で、しっくり……してた。

『ふーん、逢ちゃん、っていうんだね。よろしくね。』
うん、ありがとう……えと、あなたは?
『あ、あたし?あ……』

そこに。
二つのカップの乗った……トレイを持った、男の人が、来た。
「なんだ、こんなところにいたのか。」
『あ、にいちゃ!』
え……
……知り合いさん、みたいだった。
え、えと……
ここ、いいですよ。あたし、まだ行く場所……あるから。


その子の横顔が……
どこかで見覚えのある、とびっきりの笑顔だったから……
邪魔、したくなかった。
『え、別に大丈夫だよ、逢ちゃん?』
うふふ、ありがとう、でも、水入らずの邪魔は……うふふ。
『!だ、だから、そういうんじゃ……もう。』
なんて言いながら、……うふふ、顔がまっか。
ちょうど、スコーンも食べ終わったし……
カップだけ手にして、あたしは立ち上がった。
「あ、いいんだよ?俺達、別にデートとか、そういうんじゃないから。」
『えー、にいちゃ、ひどいよぉ。』
あらら。
うふふ、「そういうのじゃない」なんて言いながら、顔が不機嫌……あれ?……にいちゃ、って……
……もしかして……えと、……お兄ちゃん、なの?
『へ?あ、うん、そうだよ。……えへへ。』

……
……うふふ、お兄さん、なおさら、二人っきりに……なってあげてください。
「え、でも……」
あたしも、まだ行く所あるから……えへへ、楽しかったよ。
『あ、うん、あたしも……また、今度は一緒に食べようね!』
うふふ、ありがとう。



……その、とき。
……


その子の目は……




きっと。きっと……


限りなく……
あたしと、おなじ……同じ色をしてた。

……そういえば……あの子、まだ……名前……
ちょうど、その時に……お兄さんが来たんだよね……


……でも。

なんでかな……あの子には、また……会えるような、気が……する。




名前や、すきなことや……
うふふ、お兄さんのこと、どう、思ってるのか……は……
その時、……聞けるといいな。



コーヒー片手に、またまた……
見知らぬ道を、ひとりあるき。


……いつか、会えるときは……
……この街に、あに、を……誘ってみたい。




……マキアートの、意味は…………
イタリア語で、「しみ」っていう……意味なの。
泡の中、ひとしずくのコーヒーの色を、楽しむ意味で……





きまぐれな、キャラメルマキアートの……一人歩き。



……また、来ようっと。







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……………………ぐぅ。





それから…………






帰りの駅に、再びたどり着いたのは…………



…………4時間歩いて、日も暮れた頃……でした。
…………ちょ……ちょっと、くじけそう、かも……ぐぅ……


             【ひろがる、さきに】完
偶然に出会った、その子。
カジュアルな服装で、ちょこっとだけ、おっちょこちょいで……
……誰、でしょう?
えへー、是非、ネオシスに興味のある皆さんは、これからのネオシス情報をご覧になってください☆


……え?よれよれの逢はどうなったか、って?



……ごめん、思い出すと心がくじけそ(ry)
俺の実体験に基づいた話だってバレバレやもんねぇ。
つまりそれくらい方向音痴な俺でした。(多分逢もww)

戻ります……☆