一晩中、雪は降り、風は吹きました。
……道を包んで、街を氷の幕で覆って。

……おだやかな爪あとを、いっぱい、いっぱい……




数え切れないくらい、残した……一夜。


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空は、まだ冷え冷えとする青空。
天気が崩れるなんて、……思っても、いなかったの。
その日は、……あにとの、大切な……今年最後のおでかけ。
お家で準備して……うふふ、とっておきの……ケープを用意して。


あにが、お店まで……戻ってきてくれる、大切な……日でも、あったの。




最近、少しずつ……ともだちにも……話してるけど。
あたしは……今、お店の二階に住んでるの。
ハンドメイドの、お洋服のお店……
仕立て場の横、階段を上がると……そこに、あたしの……お部屋がある。

窓から、待ちきれなくて……うふふ、ずっと、外を見てたの。
そのとき……すこしだけ、空が……曇ってて。
……ちょっとだけ、嫌な予感が、……よぎったの。


雪は好き。
でも……会えなくなっちゃったら、いやだなぁ……って。


でも、そんなのは……取り越し苦労だったの。
うふふ、あには……ちゃんと、来てくれた。

どれくらい、うれしかったか、っていうと……

駆け下りる階段。
脇の、フックに……ケープのはしを引っ掛けて。
ぐぇっ、って、なっちゃうくらい……え、えへへ……



もともと、あにもここにお世話になってたから……
そして、お店は……あにと、あたしの……おばさんのお店だから。

「おかえり!」

って……うふふ、まるで、家族みたいな……迎え方で。
あには、照れくさそうに……笑ってた。


……ひととおり、おばさんと……あにが、お話したあと……
おばさんは……

…………意外な、言葉を告げたの。
『今日は、大雪になるかもしれないから……外には、出ない方がいいわね。』



……頭の中が……真っ白になっちゃって。
だって……
……ずっと、待ってたんだよ?この日を……
なのに……行けないなんて……さみしいよ……

さっき、一瞬だけよぎった「いやなよかん」……
……あにも、「うーん……どうなんだろ?……どうする?逢……」って。


……う……

行きたいよ。
あにと、一緒に……行きたいよ。


でも……

あたしの考えは……おばさんにも、……あに、にも……分かったみたい。
『でもねぇ……出かける分にはいいんだけど、帰れなくなっちゃうかもしれないわよ?』

………………

「雪で、電車が止まっちゃう……ですか?……俺は、どうでもいいですよ。逢が行きたければ、行くし。」

………………
あには、気づかってくれたんだろう。
……きっと……

そのときのあたしは……泣きそうな顔、してたんじゃ……ないかな?

『うーん、逢ちゃん、どうするの?』
おばさんも、まだ……すこし、軽い心配顔。
それくらい、空は晴れていて……雲も、はるか遠く。
……大雪なんて、考えられなかったから……
『……降らなければ、いいんだけど……ここに帰れなくなったら、二人とも、大変だからね……』

………………



実は、その時……
あたしの中には……とても、良くない考えが……あったの。
でも……そ知らぬふりで……


……あに、あたし……行きたい。



あたしは、はっきりそう言った。

あにも、その答えを予想……してたみたい。
「大丈夫ですよ、そんな簡単に電車も止まらないから。」
すぐ、そう言ってくれて……
『うん……まあ、そうね、ひさしぶりのデートだもんね〜、ねぇ、新婚さん?』
!!!ぐ、ぐぅ、そ、そんな、おおお、しんこんさん、なんて……


からかわれながら、あたしは……支度をすませて、外に出た。
……お隣で……あにも、いっしょに。


……あにの横顔を、かるく見上げると……
……その横顔は、やっぱり……ちょっと、心配そうだった。
そういえば……空、少しずつ……雲が、増えてる気がして……



「逢、おいで。」


……あにが、そう言って……手を、差し出してくれなければ。
あたし……笑顔になれなかったかも、しれなかった。




……もし、帰れなくなったら。
そして……もし、そのとき……あにが、そばに……いたら。



……不意に、そんな考えがよぎって。
そして、すぐに消えていった。




……電車が地下に入った。
あにと、取りとめもなく……いろんな、おはなしをする。
……あのね、学校でね……
……ああ、それ、俺もあったなぁ……
……で、ね……そのあと……


……話に夢中になって。
そんなあたしたちの横顔に……トンネルの向こう、明かりが……さした。


そして……

……気がつくと……




外は、雪で……どこまでも、真っ白になっていた……

……きれい。
隣で座る、あに。
そして、窓越しの……雪化粧。



「……すごい勢いの雪だな……さっきまで、晴れてたのにね。」
……うん……
でも、あたしは……
そんな事、ほんとうは……考えてもいなかったの。



電車を降りて。
レンガの町並みを、あにと二人。
……うふふ。
あにと一緒、って……どうして、こんなに……楽しいのかな。

植え込みの緑が、雪の白で……引き立てられる。
吐く息と同じ、白い世界が……音もなく、舞い降りて。

……あたしは。


……あにが、とっても……特別なんだ、って……急に、思った。





少し離れてしまった、あにの腕につかまる。
……そうしてるだけで、……寒さなんか、もう……どうでもよくて。


……気がつくと、あにも、あたしも……
足を止めて、雪の中……立ち尽くしていた。



……このまま。
……


……また、一瞬だけ……
良くない考えが、わきあがって。


自分でも、じぶんが……分からなくなったころ。


「これは……逢、一度駅に戻ってみよう。」

あに……の、ちょっと……変わった声音で、あたしは我に返った。



踏みしめる雪のレンガ道。
傘がなくても、ゆっくり歩ける……やさしい綿の雨。
……心の底では、嫌な予感が根付いていても。
少なくとも、あたしもあにも……見慣れない雪へのわくわくを……感じてた。



このまま、時がとまってしまえば、いい。


笑顔のかげで……
あたしはずっと……

そればかり、考えていた。

本当は、……雪が心配なんじゃない。
帰る心配を、心の底から……してたわけじゃない。


……あたしは…………とっても、……ずるい。

……いつも、……ずるくて、悪い……子、なんだ。






駅は、なんだかお祭りみたいに……ざわざわしてて。
でも、その声の中に……ひとつも、笑い声はなくて……





『大雪のため、線路凍結 復旧の見通し立つまで全線運休します』




その立て札と、駅員のアナウンスが……ひびいてた。

             【ゆくえ、しれずの】つづく
わー、ついに出してしまいますw
ずーっと、暖めてたネタですwでも、「はからずも……」みたいなネタにはしたくなかったのでw
逢の……他の人には絶対見せない、一面。
でもね、逢だって、いい子でいたくない時はあるはずなんです。


初の続き物……これ、果たしていいんだろうか……なんて思いつつ。
「俺たちから見た妹への感情」は、素直に「愛情」ですむかもしれない。
だけど、そうでないものを突きつけられた時……

実は、辛い思いをさせてる子が、いるのかもしれない。
自分の思いがなんなのか、どうしてなのか、どうしても分からなくて。

恋でも、愛でもない……だけど、「同じ水でできてる」こと……?
戻ります……☆