思えば……うふふ、すごい、偶然だったんだよね。


小雨が降って、ちょっと肌寒くなって……
でも、ね。それで雨が上がると……普段なら、暑くなっちゃうよね。

でも、今日は違ったの。

……待つとても かばかりこそは あらましか 思ひもかけぬ 秋の夕暮れ

そんな、好きな歌を思い出しながら、今日は何を着て行こうかな、……なんて、考えて。
予報では、今日は……初めての、秋っぽい日になるかも……って。



普段、おでかけの時にロリ服を着るあたしにとって……
秋と、春は……最高の季節なんだ。
夏は、肌が出る服を着られない分、すごく気を遣わなきゃいけなくて……
一方、冬は……ふ、冬は……

……ぐ、ぐぅ、あたし、寒がりなんだよね……

……うん、これにしようかな。
あに、とのお出かけの前に……一度、袖を通してみよう。

……これで、……あにから……も、もし、電話なんてあったら……
気温、好きな服、……だいすきな、あに……
えへへ……そ、そんな偶然、ありっこないってこと、……わ、わかってるよ。
でもね、ほら……そんなこと考えてると、電話が鳴り出すような……そんな気に、…………ぐぅ、なるわけ、ないかぁ……


ちっちっちっちっ……

そんな、時計みたいな音がしたのは、その時……
……バッグの、ポケットからでした……

そして、…………え、ええ、えええ!
手に取ると、それは……音楽を、奏でだしたんです!

ぐ、ぐぅ!だ、だけどだけど、いきなりなんて、そんな……
も、もちろん、あにからの電話なんて、そ、その……すごく、嬉しくて……

……ぐ、ぐぅ!電話が切れちゃう!
あわてて、……何を言うかなんて考えもせずに、着信のボタンを……

『……やっほー!あたしなのだ、苺ちゃんなのだー!』

そ、そうだね、あに、あたしも、あにといっしょに……おでかけ、したいよ。
『……んー?逢ちゃん、いないのかー?苺ちゃんが電話だぞー!』
わ、わかってるよ、ふたりっきりにもなりたいけど、でも……

……へにょ?

「あ……あれ……あ、苺ちゃん?」
『そーなのだー!どーしたの、逢ちゃん、今の間は何なのだー?』
「え、えとね……」
『……!ははーん、さては、兄っちからの電話だと思ったなー!』
!ぐ、ぐぅ、何で分かるの?
『んー、いいのだいいのだ、苺ちゃんは心がすごいから、そんな逢ちゃんのコイゴコロもお見通しなのだー!』
「こ、ここ、恋なんて……そ、それは、あたしはあにのこと、大好きだけど、その、そんな……ぐ、ぐぅ……」
『あっはっはー!逢ちゃん、おかしいのだー!』
ぐぅ……いいように笑われてるよぉ……
「そ、それよりも、どうしたの?」
『んー?逢ちゃんこそどうしたのだ?急に電話なんて……』
…………え? え、あたし……?
でも今、あたし……確かに、着信の曲……聴いてたよね?
それに……
……着信してから、あたし、ぼーっと……してたもんね……
「えっと……苺ちゃんからの……えと……」
『……あー、ごめんなのだ、苺ちゃんからの電話だったのだ……』
「ぐぅ、そうだよぉ、うふふ。」
『あのね、実は……』


……うふふ、意外にも……同じようなこと、考えてたんだね。
そう、今日は実は……あたしたちの友達の、大切な日……

「……うん、あたしは……いいよ。一緒におでかけ……しようか。」
『決まりなのだー!どこのお店に行こうか、楽しみなのだ☆』
「うふふ、あたしもだよ。……じゃあ、あとで、駅前で……」
『おっけいなのだ!それじゃ、後でなのだー☆』


……一緒に、誕生日のプレゼントなんか見に行きたいのだ。

それが、苺ちゃんからの、おさそい。
うふふ、あたしも……めずらしい事だから、ちょっと、わくわく、です……
だって、まだ苺ちゃんとはちゃんと会ったことも……ないんだよ。
「なのに、どうしてあたしを誘ってくれたの?」って聞いたら……
『んー、涼しくなって、今まで着なかった秋物が着たくなって……なら、逢ちゃんと一緒なら恥ずかしくないかな、って……』
そ、そうなの?
『おー!逢ちゃんの事だから、バシッとフリル満載だと思ったのだ。逢ちゃんも着てるなら、苺ちゃんが着てても恥ずかしくないのだ!』

……だって。うふふ、かわいいよね……
せっかくの秋日和……あたしは、苺ちゃんとのおでかけ、という……珍しいルートを……選んだの。
苺ちゃん、どんなのを着てくるのかな……うふふ。
それに、どんな……うふふ、買おうかな?






タイツのかわりにオーバーニーを履いて。
どれくらい涼しくなるか、分からないから……
そして、待ち合わせの駅に。

…………って、思ってたんだけど……
……電車に乗って、すぐ、あたしは……降りなくちゃならなくなっちゃった。
……考えすぎ、なら、いいんだけど……
……ずっと、あたしのそばで……もぞもぞしてる人が、いて……
最初は、具合でもわるいのかな、って思ったけど……
その人は、そ知らぬ顔で……こっちに、擦り寄ってきた。


恐い。
そう思ったら、あたしは……目的地のひとつ前の駅なのに、降りちゃってた。
……どうして、男の人って……ああなんだろう……
……あには、そんなこと、ないよ、ね?
あたしは……あんな変な人のために、可愛い服を着たいんじゃ……ない。
……あにと、あにが見てくれるような、あたし……そのため、だよ。

暗い気持ちになりながら、次の電車に乗って。
……考えすぎ、そう……思いたいよ……
……いけない。苺ちゃんとせっかく会えるのに、こんなじゃあ……、

時間は、かっきり電車ひとつぶん、遅れてしまって。
……なんとも言えない気持ちで、苺ちゃんを探して。
……


……おー、いたのだー、フリルな逢ちゃんなのだー!

……あたしが探さなくっても、よかったみたい……

苺ちゃん、ごめんね。ちょっと遅れちゃって……
「いーのだいーのだ!……?……どーしたのだ、逢ちゃん?」
え?

そしたら、苺ちゃんは……不思議そうに、言った。
「……何か、さっきと声が……全然違うのだ。何か……あった?」
ううん、なんでもないよ。ごめんね、遅れちゃって。
あたしはそう言って、苺ちゃんにさとられまいとした。
せっかくのおでかけを、あんな……つまらない、くだらない事で……
……だいなしに、したくなかった。
「んー?まあ、いいのだ。実はっ!スペシャルゲストなのだー!」
……そういって、手を指した先に……
「……逢ちゃん、こんにちは。」
……え、え?若菜ちゃん……だよね?
「にゃははー!逢ちゃんを待ってる間に、ホカクしたのだー!」
「そうなんです。今日は一人でお買い物……のつもりだったんですけど……そこで、苺ちゃんと会って。」
そうなんだ……
「だから、逢ちゃんが遅れたおかげなのだー!うぃなー、いん、アイー!」
……うふふ、ウィナー、って……
苺ちゃんの明るさに……あたしは、感謝しました。
……意識している、いないに関わらず……
……苺ちゃんの笑顔は、人をすてきな幸せで満たしてくれるんだね。
「さー、じゃあ、早速アイスの美味しいお店にゴー、なのだ!」
「ええ?でも、例の贈り物は……」
「腹が減ったら別腹なのだ!さー、行くのだー!」
へったら、べつばら……うふふ、おもしろいの。
「逢ちゃんは……いいですか?」
え?うん、もちろん……いいよ、若菜ちゃん。……若菜ちゃんは?
「私も、別にいいですけど……そのお店のスコーンが、おいしいんですよ。」え、そうなの?……うふふ、じゃあ、それ、食べにいこうか?
「けっていなのだー!」


そうして三人……
ショッピングモールを抜けた先にある、おしゃれなカフェテラスに入ったの。
なんでも、タウン情報誌にも掲載されたくらい……そこのジェラートとスコーンは、おいしいんだって……
席に着いて……あたしはやっと、二人の服装に目を向けられたの。
苺ちゃんは……なんと、ベイビー・ピンクハウス……
多分、あたしが着てるのよりもちょっとだけ、高いやつ……
赤のパーカーとスカートの組み合わせの中に、白いプレーンなブラウス……
ひかえめで、でも弱くない、いい合わせ方だったの。

一般には、ピンクハウスは主婦の方とか……うん、お母さん用のブランド、って思われがちだけど。
子供服をあつかう部門も、こうしてあるんです。
……そうか、苺ちゃんはだから……

苺ちゃん、その合わせ方、すごくいいよ。
「え、ホントなのか!?」
うん。でも、一番大きなのを買ったんだよね?ちょっと、袖が足りないみたい……
「うーん、それがちょっと気になってたのだ。」
プトマヨのなんか、どうかな?後で、ちょっとだけ、見に行こうか?
「おおっ!それがいいのだ!逢ちゃん、買ってくれるのか?」
あはは、あたし、今そんなにお金ないよぉ。
「ぐぅー、残念なのだ。」
あ、あたしの口癖、まねされちゃった、うふふ。

一方の若菜ちゃんは……わぁ、きっとマーブルの新作……
青のチェックと、二段フリルのドレープが、すごくかわいいの……
あたしがそう言ったら……「え、見ただけで分かっちゃうんですか?」だって。
えへへ、これだけは、ちょっとだけ……得意なんだぁ。
かわいくてすてき、って言ったら……若菜ちゃんは、顔を真っ赤にして……
うふふ、ほんとに、かわいいの……

と……
「……あれ……あれれ?そこにいるのは!」
苺ちゃんが指差した先には……          (つづく)





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